かつての主役は収支計算書でした
旧会計基準で永らく経理をなさっていた方は、収支計算書を様々な場面で利用されていたのではないかと思います。正味財産増減計算書(ストック式)も昔からありましたが、実務で利用している方は少なかったのではないでしょうか。
かつては貸借対照表と収支計算書が最も重要なものでしたが、現在では収支計算書は正規の財務諸表から外され、正味財産増減計算書(フロー式)がそれに取って代わる事となりました。
資金取引と資金外取引
なぜ主役を交代する必要があったのでしょうか?
それは公益法人を取り巻く社会環境が変化し、取引を表現する範囲が変わったからだと考えられます。収支計算書は資金(お金)の増減を表していますが、それだけでは法人が行うすべての取引を表していることにはならないのです。
例えば、有形固定資産の減価償却を行った場合、減価償却費という費用が発生したと会計上は捉えますが、実際に資金(お金)の増減は伴いません。このように資金の増減が発生しない取引について、収支計算書ではどこにも表示がありません。しかしながら、正味財産増減計算書では資金(お金)の増減を伴わない取引も表示しますので、法人が行ったすべての取引を網羅することとなります。
「正味財産増減計算書」 = 資金取引 + 資金外取引
「収 支 計 算 書」 = 資金取引
勘違いしやすい「収支予算書」
収支予算書については、実は困ったことがあります。
言葉の定義の問題ですが、「収支予算書」と言えば、旧会計基準が制定された何十年も前から資金取引を表した予算書を指すのものですが、今回制定された公益認定に関連する法律で、正味財産の増減を表す予算書を収支予算書と言ってしまったのです。個人的意見ながらこのネーミングはあまり適切ではなく、「正味財産増減予算書」とすればもっとわかりやすかったのにと思います。
結果として「収支予算書」は資金取引についての予算書のことを指す場合(普通はこちらを指します)と、認定委員会に提出する「収支予算書」(この場合は資金取引と資金外取引についての予算書)の2種類ある事になります。
認定委員会に提出する「収支予算書」は普段私たちが使っていいる収支予算書の事ではなく正味財産増減計算書に対応する予算書であることをご注意ください。
「収支予算書」は法律で定めている言葉ですから、名前を勝手に変えるわけにもいかず実務上は面倒なことになっているのですが、PCAでは便宜上以下のように言葉を使い分けています。
以降、当サイトにおいても、収支予算書(正味)と収支予算書(収支)という表現を行います。
- 全取引に関する予算書 ─ 収支予算書(正味)
- 資金取引に関する予算書 ─ 収支予算書(収支)